ポスト量子暗号(Post-Quantum Cryptography、PQC)は、量子コンピュータによる暗号解読に対抗するための暗号技術のことを指します。量子コンピュータは、現在広く使用されている公開鍵暗号(例えばRSAやECC)のセキュリティを破る能力を持っているとされています。これは、量子コンピュータがショアのアルゴリズムなどを使用して素因数分解や離散対数問題を効率的に解決できるためです。
ポスト量子暗号、量子コンピュータが実用化されても安全であることを目指して設計されています。
1.格子基盤暗号(Lattice-based Cryptography):
・格子基盤暗号、数論的な格子の問題(例えば、最短ベクトル問題や学習誤り問題)に基づいています。問題は、現在のところ量子コンピュータでも効率的に解けないと考えられています。
・例:NTRU暗号、LWE(Learning with Errors)に基づく暗号。
2.符号基盤暗号(Code-based Cryptography):
・符号理論に基づく暗号であり、例えば、マクラリス暗号(McEliece cryptosystem)などが含まれます。これらは、符号理論における困難な問題(例、ランダム線形符号のデコーディング問題)に依存しています。
3.多変数公開鍵暗号(Multivariate Quadratic Public Key Cryptography, MQ-based Cryptography):
・多変数多項式の方程式の解を求める問題に基づいています。これらの方程式を解くことは計算的に困難であるとされています。
・例:HFE(Hidden Field Equations)暗号。
4.ハッシュ基盤暗号(Hash-based Cryptography):
・デジタル署名などに利用されることが多く、特にMerkle署名スキームが有名です。ハッシュ関数の安全性に依存しています。
5.同型暗号(Homomorphic Encryption):
・データのプライバシーを保護しながら計算を行うことができる暗号技術です。格子基盤の手法がよく使われます。
ポスト量子暗号の現状
現在、ポスト量子暗号の標準化に向けて、NIST(米国国立標準技術研究所)が国際的な競争を主催しています。多くの候補が提出され、その中から安全で効率的なものが選定されています。2022年には第3段階の候補が発表され、最終的な標準化に向けた評価が進められています。
ポスト量子暗号は、将来的に量子コンピュータが実用化された場合のセキュリティを確保するために重要な技術であり、今後も研究と開発が続けられるでしょう。
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