ナノヘルツ重力波

ナノヘルツ重力波、非常に低周波の重力波であり、その周波数はナノヘルツ(1ナノヘルツ = 10^-9ヘルツ)の範囲にあります。重力波とは、時空の曲がりの波として理解され、アルベルト・アインシュタインの一般相対性理論により予言されました。重力波は、質量を持つ天体が加速度運動を行う際に放射され、時空を通じて光速で伝播します。

主な特徴

  1. 極低周波数: ナノヘルツ重力波は非常に低周波であり、周波数は1年間に1回の波に相当します。
  2. 起源: このような低周波の重力波は、銀河の中心にある超大質量ブラックホールのバイナリ(連星系)や、宇宙初期のインフレーション期に生成された重力波背景放射など、巨大な天体イベントから放射されると考えられています。

観測方法

ナノヘルツ重力波の観測には、通常のレーザー干渉計を用いたLIGOやVIRGOのような地上検出器ではなく、パルサータイミングアレイ(PTA)と呼ばれる方法が用いられます。パルサータイミングアレイは、ミリ秒パルサー(非常に安定した周期でパルスを放出する中性子星)を観測し、その到達時間の変動を精密に測定することで、重力波の影響を検出する技術です。

パルサータイミングアレイの役割

  • パルサーの役割: パルサーは非常に正確な自然の時計として機能します。パルサーからのパルスの到達時間の変動を解析することで、重力波による時空の歪みを検出します。
  • 主なプロジェクト: 北アメリカのNANOGrav(North American Nanohertz Observatory for Gravitational Waves)、ヨーロッパのEPTA(European Pulsar Timing Array)、オーストラリアのPPTA(Parkes Pulsar Timing Array)などが主要なプロジェクトとして活動しています。

ナノヘルツ重力波の観測は、宇宙の大規模構造やブラックホール連星系の進化など、宇宙物理学の根本的な問題に対する理解を深めるのに役立つ重要な手段です。

中心にある超大質量ブラックホールのバイナリから放射される低周波の重力波が、時空の歪みを引き起こしている様子が描かれています。背景にはパルサータイミングアレイが配置され、重力波の影響を測定しています。

 

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