「形状記憶合金」の仕組みって??

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お米を炊くのって難しいんですよね?
浴室などでちょうど良い温度でお湯などが出るのは便利です。
その方式もパネル操作で適温の設定ができるなどシンプルな操作性で分かりやすいものとなっています。

手回しの「混合水栓」ではよく調整を失敗して「熱かったり」「冷たかったり」しました。
あの中の仕組みってどうなっているのでしょうか。

*** 仕組み…
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上図イラストの場合では “水栓” の内部に「形状記憶合金製バネ」と「バイアスバネ」のバランスによって「温水と水道水」の流量のコントロールがされています。

通常使用時「低温時」では形状記憶合金製のバネは設定の温度とは違うので「バイアスバネ(温度変化に影響されない)」とのつり合いが取れてバルブは「水道水」を放出している状態です。
温度調整つまみを「高温」の方向へ回していくと “回した分” バルブを移動させます、温水が供給されている口から入ってきた温水はバルブにある穴から流れ込んで水と混合され温度調整されていきます。
完全に温度調整つまみを「高温」の方向へ回していけばその分排出される水の温度も高くなります、というより熱湯が出ます。
日常ご使用になられているので調整の仕組みなどはご存知のはずですね。

今ではセンサーによって電子制御すればその前後の機関などとの連携もとりやすいでしょう。
ただし、上記ご紹介のように「水栓」「(エアコンなどの)フラップ」などのように構造(機構)自体が単純なものなどではこういった方式も多く活躍しています。
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また、圧力や衝撃などの力によって変形しても、流体や空気の温度の変化によって元通りになるのも利用方法を広げています。

*** 硬い金属が「温度によって柔軟に反応…?」…
鉄鋼材(炭素を2%程含んだ鉄)は、高温から一気に急冷させると炭素が変化を起こします。
この現象を「マルテンサイト現象」といいます。
※ マルテンス:1850~1914、ドイツにより発見されたものです
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鉄の地金の中に溶け込めなかった「炭素」が “針” のような形状で「硬く」「高密度」に変化して並んだ状態になります。
よく鍛冶屋さんが行う「焼き入れ」がこの現象を応用した鍛錬法というものです。

金属分子同士の結合によって各種鉄鋼材などが出来上がるのですが、その結合にも「単順に繋がった連鎖的(連続的)な結合」もあれば「網目状(格子状)」のようなしっかりとした強い結合もあります。
鉄やその他の金属分子などが構成する層のズレによる変形を「温度」によって元に戻す力に変えているのが「形状記憶合金」ということです。

各合金(素材)の違いによって「高温で安定する」「低温で安定する」といった性質の違いがありますので、その差をうまく利用することでできているのです。
重量がかかったり衝撃が加わったりして「変形」をして金属の層にズレが生じても温度を変化させることで安定する方向へと戻ってくるのは “金属が生きている” ような感覚ですよね。
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こういった性質の微妙な違いを組み合わせることでより快適な性能へと変えていく技術は、形態安定シャツなどにもその原理は活かされています。