重力波という現象をご存知でしょうか。重力波はこれまでSFの物語などで度々使われていた用語です。2016年2月に重力波の初観測が話題となりました。重力波は1916年に、一般相対性理論に基づいてアルベルト・アインシュタインによってその存在が予言された後、約100年もの間に渡り、幾度と無く検出が試みられ、2016年に遂に検出に成功したのです。
では、重力波とは一体何かというと巨大質量をもつ天体が光速に近い速度で運動するときに強く発生するゆがみの伝導の現象です。重力により発生する液体表面の流体力学的な重力波とは名称が同じですが異なります。重力波の概念は、アルベルト・アインシュタイン自身が、一般相対性理論を発表から2年後に発表されました。
この重力波を観測するために干渉計型検出器が、2000年代に世界の数ヶ所で稼働を始めます。アメリカでは干渉計aLIGO(advanced LIGO)2基がワシントン州とルイジアナ州で稼働。この2基が重力波を世界で初めて検出したと発表されました。イタリアとフランスは共同でVIRGO干渉計をイタリアに設置。ドイツとイギリスは共同でGEO 600干渉計をドイツに設置。そして日本では東京大学の宇宙線研究所重力波推進室が観測装置「大型低温重力波望遠鏡(LCGT, Large Cryogenic Gravitational Telescope)」(大型低温重力波望遠鏡 KAGRA かぐら)を岐阜県神岡鉱山跡地に建設しました。2016年3月にも試験観測を行い、2017年には本格的に観測を開始する予定です。
KAGRAという通称は日本語の「神楽」に神岡の「KA」と重力波(Gravitationalwave)の「GRA」を合わせた形でつけられています。
現在神岡鉱山は日本の物理学・宇宙研究において重要な場所となっています。KAGRAの観測装置として世界でも最高精度の観測性能を誇っています。
この初観測の発表以来、重力波天文学は大きく進歩しました。世界各地でも重力波を検出できるようになります。2016年5月には全米科学財団とインドとの間で協定が結ばれ、2023年にもインドにLIGOのような重力波検出装置が設置される可能性が出てきました。日本も地下に重力波検出装置を建設中で、2018年に稼働予定です。
宇宙に存在するあらゆる神秘が解明される日は近いかもしれません。