判、判子、印鑑、印章、スタンプと様々な呼び方のある印についてのお話です。
日本では印鑑が生活必需品であり、実用品として使われる他に、スタンプラリーなどにゴム印が娯楽にも使われています。海外の出国と入国の際にもパスポートにスタンプが使われているように、印は世界中で用いられていますが、実はその世界の中でも日本は印を重要視する傾向がある国です。外国によってはサインで良いとされる国もあります。
印は古くから日本で使われていますが、いつから使われているのか?誰が最初に作ったのか?などは定かではありません。それを裏付ける確かな資料がないためです。現存する日本最古の印は国宝に指定されている金印です。漢委奴国王と印されています。古代の中国の後漢の光武帝が中元2年(西暦57年)に日本の倭奴国に金印を授けた、と伝えれています。あくまでも日本で見つかった最古の印なのでこの頃に日本で印が普及していたというわけではないようです。
印の制度が公務で整備されたのは奈良時代です。701年の律令制からだといわれています。この時に公印が使われるようになりましたが私印の製造、使用は禁止されていました。
平安時代には貴族にも私印が認められるようになります。ですが、一般庶民の場合は書類に署名していました。今で言うサインです。字が書けない人は人差し指で点をうつ画指や手形を押していました。
その後、平安時代中期から末期のかけて、官印がほとんど使われない時代があります。代わりに花押が用いられるようになったのです。花押とは書判 (かきはん) ともいわれる簡略な形に変化させた自署です。花押は公家、領主、武将などが作成、使用しました。一般庶民は拇印、爪印などを書類に印として用いるようになります。
戦国時代に入ると戦国武将達は私印と花押を併用するようになります。武将達の私印は各々の趣向を凝らしたデザインでした。武将によっては字体の他に龍や虎、獅子などを印に用いていました。これは権力と威厳を表現するためです。有名どころは織田信長の天下布武の印などでしょう。
江戸時代には行政の書類のほか私文書にも印を押す慣習が広まります。また、印鑑帳が作られるようにもなり、これが後の印鑑登録制度の起源となります。この頃から日本で一般庶民まで印章を持つことが広まり、印の存在が重要視されるようになります。
そして明治6年(1873年)10月1日、太政官布告で公式の書類には署名のほかに実印を捺印する制度が正式に定められます。この判子が広く認めれた記念日として10月1日は印章の日となりました。