なぜ漆を塗るのか? ご存知でしたか?

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日本の伝統工芸品の多くには漆塗りが施されていますね。
「漆黒」という言葉があるように吸い込まれるような深いツヤと輝きを持っていますが、なぜ漆が使われるのでしょうか。

「漆」はウルシ科のウルシノキから採取した樹液を加工・精製した天然樹脂塗料で接着剤としても使用されています。
漆器に金箔や金粉で装飾をする「蒔絵」でも漆は接着剤の役割をしていますし、「漆+小麦粉」を練り合わせた接着剤で割れた器の補修をしたりしたそうです。

「漆」は熱気・湿気などの温度変化や酸にもアルカリにも強く、防虫効果もあるので食器にもよく使われる。(塗り茶碗、漆器など)
ただし強い乾燥には弱い面があり、ヒビが入り割れてしまう事もあります。

また、漆の樹に触れたりしただけでもかぶれるのは、「ウルシオール」という成分の影響です。
アレルギー性の症状である皮膚の炎症が起きて痒くなったりします。(近づいただけでも反応を起こす方もいます。)
アジア原産のウルシ科の種類では「日本の漆」に「ウルシオール」という成分があります、他の地域の種類には「ラッコール」「チチオール」など違う成分があるので風合いや色味が違ってきます。

漆器など塗料として「漆」の塗られた面は網目状に高分子結合されています。
その網目状の塗膜を職人さんが何度も何度も塗り重ねていくので水分は通さず空気は通るという状態になっています。
そのため「木地」と呼ばれる木製の器に漆を塗り重ねた漆器は、木が呼吸できますのでいつまでも良い状態で使用できます。

大量生産されたものに「漆風」の塗料(酸化チタン系レーキ顔料)が使用されることが多くなったことや、漆器自体も高価なため「漆」の出番は減ってしまったことは事実です。
「漆黒」とは本物の仕事をした物にしか出ない色合いです、普段使いする事で本来の持ち味も出てくるのでしょうね。